【異国トーキョー漂流記】
高野秀行著、集英社、2005
今日の本は、著者が東京で出会った異邦人とのストーリーに関する本。
舞台は東京であるが、著者および異邦人たちを通すと、東京はたちまち国際都市トーキョーに変貌する。
なにより、著者が出会う人々のキャラクターやバックグラウンドが多種多様であり、既知のこと・未知のことをないまぜにして楽しむことができた。
本書第一章の「日本をインド化するフランス人」での一文が心に残っている。
「オランダ、ベルギー、スイスの人間は外国語が得意だよ。国が小さいから言葉ができなきゃ生き残れないんだ。」(本書p36より引用)
なるほど、とハッとさせられた。国が小さいため、自国のみでなく、国外にも活躍の場を求めることが必然的に多くなる。
そんな人々が国際社会で通用するためには、まず複数言語が話せるようでないと活躍することは出来ないのである。
こんな実情も知ることができたことは幸運であった。
また、野球好きの私にとって、第八章の「トーキョー・ドームの熱い夜」もあっという間に読むことができた。
マフディという、アフリカ大陸のスーダンからやってきた盲人の留学生とのエピソードである。
彼は生まれてから一度も野球を見たことがない、熱狂的なプロ野球ファンであった。ちなみにスーダンに野球というスポーツはない。
ところが、著者顔負けの知識を披露し、果てには解説をしてのけるほどの見聞をもつ。
読んでいると、マフディのような異邦人にも愛される日本に住んでいることに嬉しさを覚えている自分がいる。
他にも紹介したいエピソードだらけなのだが、詳細は是非本書をご覧いただければと思う。
普段日本人が見ている東京は、一つの角度からの視点でしかないことを気づかされる。
日常が非日常になる、そんな体験をさせてくれる一冊である。
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