川ガキ育成学校【鈴木読書】

【川の学校】
野田知佑著、三五館、2012

川下りのパイオニア、野田氏が校長を務める「川の学校」について知ることの出来る一冊。川の学校とは、「川ガキ」(川で遊ぶ子供達)育成のためにこれまで数多くの旅をしてきた著者が、旅で出会った仲間たちとともに開校・運営しているものである。
モンベル会長の辰野勇や作家の椎名誠など、そのスタッフには錚々たるメンバーが連なる。

著者は、川で遊んだことのない大人たちが増え、その結果、日本中の川で遊びが禁止されつつある現状を憂いている。
そのため、ダム建設反対運動なども行ってきたが、暖簾に腕押しである。そのため、「人」を育てるために当事業を行なっている
世界一の川がある日本を残すために、何より、川で遊ぶ楽しさを共有したいがために行なっているようにも思う。

 

本書の中に、印象的なシーンがある。
以下引用。

テレビ局のインタビューを受けた際、
記者は「川の学校に入ると、子供の何が変わりますか?」「川の教育的価値について教えてください」と尋ねる。
また、子供達には、「川に入って何が面白いの?」と質問をする。
この国の人間は幼稚な教育癖があり、教育にいいといわないと納得しない。インタビュアーは、遊びに何か明確な理由や結果がないと納得しないのだ。

川で遊ぶことに理由なんてない。川に入って遊ぶのが楽しいからだ。水に入るだけでも気持ちいい。
ちなみに、このインタビュアーはこれまで一度も川で遊んだことがないという。(引用終わり。一部略)

川で遊ぶ力、川ガキになる力。それは自分で生きる力、世界を面白くする力につながると思う。

 

私見であるが、野田さんの本を読むといつも開放された気持ちになる。
また、川で遊ぶ楽しさは何物にも変えがたいと思う。
自然の中で思い切り体を動かし、日常生活から自分を解放するのは、本当に気持ちがいい。特に、夏場の暑い時期は最高である。

自分が大学生活を通して打ち込んだラフティングは、究極のチームスポーツであると思う。自分の判断、仲間との息を合わせないとボートが思うように進まず、転覆する。いわば、運命共同体である。
緊張感があってヒリヒリとしたレースも勿論、鍛えた技術を活かして川を下ったり、遊んだりするのは最高。下り終わって、温泉とお酒もあれば、もう何もいうことはない。
まだまだ川の楽しみ方も増やせるし、これからも川で遊べる環境を大事にしていきたい。

そして自分も、いつまでも川ガキでありたいと思う。

 

最後に、著者のメッセージ引用する。
—————————————–
「吉野川は西日本で残った最もいい川の一つです。いい川の定義は、そこで顔を洗いたくなり、泳ぎたくなる川のことです。こんないい川にもただ一つ足りないものがある。そこで遊ぶ川ガキです。
—中略—
今の子供たちの親の世代は、川は危ないから近寄ってはいけない、ナイフを持つのは危ない、生き物を殺してはいけない、などとつまらないことばかり教えられて育った世代です。
川の学校ではこんな偽善は無視して、何はともあれ子供を川に放り込む。魚が捕れる子供にしたい。」

※一部敬称略

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