グレートジャーニーから学んだこと【鈴木読書】

      2018/04/15

【海のグレートジャーニーと若者たち 4700キロの気づきの旅】
関野吉晴
2013、株式会社武蔵野美術大学出版局

今回は、一橋大学探検部創設者であり、OBである関野吉晴氏の一冊を紹介します。この本は、僕が海峡横断を志したきっかけでもある、大きな影響を受けた本です。

学生時代にアマゾンに行き、アマゾン川全域を下った経験を持つ著者。
アフリカに誕生した人類がユーラシア大陸を経てアメリカ大陸に拡散した約5万3000キロの行程を逆ルートでたどる「グレートジャーニー」を1993年から開始。以来、10年に渡って旅を行なっていた経験を持つ。とんでもない経歴である。
ただ、本書で語っているのは、その後のストーリーである。日本列島にやってきた人々の足跡を辿る「海のグレートジャーニー」は、とことんリアルにこだわる。
大海原を、手作りのカヌーで辿るというのだ。普通のカヌーで海を航海するのもクレイジーだというのに、なんとハンドメイドである。さらに、カヌーを作る工程も全て自ら制作する手作業で行う熱の入れっぷりである。これは、とことん太古の旅に近づこうというスタンスである。

印象的なのが、過去の旅には、同行を希望する若者を断り続けてきた著者が、今回の旅では20代の若者、具体的には在籍する武蔵野美術大学(通称ムサビ)の学生と共同でプロジェクトを進める点である。
これは、50年後も生きる若者とともに新たな発見を共有したいという気持ちと、現代人が忘れてしまった大切な何かに出会う旅を独り占めするのはもったいない、という思いからきたという。
この工程は、『僕らのカヌーができるまで』というドキュメンタリー映画にもなっているため、ご存知の方もいるかもしれない。
素材調達やたたら製鉄、カヌーに使う木を切るためのオノまで手作りで自作するのだから、旅をする前こそ苦労の連続である。
チェーンソーなんかを使った方が楽ではあるが、手作業の充実感が忘れられないと語る学生の姿も、個人的には羨ましく思うワンシーンである。いいなぁ、こういうの。

こうして完成した「縄文号」で、インドネシアのスラウェシ島から日本に向かう旅路は、大量消費社会・文明社会に当たり前のように生きる私たちへの強烈なメッセージも秘められている。

私見だが、時間をかけて完成したものは、その時間の分だけ価値があると思う。現代では欲しいものは比較的すぐ手に入るが、そうでないこと・ものに価値があるとふと思う。
大学で学んだことも、今すぐには役に立たないかもしれないが、今後の人生を生きるうえでの自分の根っこになると思う。(僕はあんまり勉強は得意ではありませんが)

自分にとって探検とは何か、を言語化させてくれ一冊です。

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