モンベルの決断【鈴木読書】

【モンベル 7つの決断 アウトドアビジネスの舞台裏】
辰野勇(株式会社モンベル代表)
2014、ヤマケイ新書

 

本書は、一言で言えば株式会社モンベルの歴史と辰野勇会長の立志伝である。独自に築き上げた、経営論が存在する。アウトドアと経営、似て非なるもの同士にも共通項が存在する。
モンベルユーザーも多く所属する探検部員は、モンベルという会社の理念やこれまでの歩みに目を向けるべきだと思う。なぜなら、僕たちにとってアウトドアメーカーは、自然の中で命を預ける装備の作り手だからだ。

 

個人的に興味深いと思ったものの中に、こんなエピソードがある。
登山家は、天気のいい日にもザックに雨具をしのばせて、日帰りの山行でもヘッドランプは必ず持って行くという。
常に用心深く、「山を登るのか、下りるのか」という決断を瞬時に行わなければいのちに関わるからであり、万一の場合に備えてバックアップも用意する。
著者曰く、これが経営者に必要な決断力であり、言い換えればリスクマネージメントであるという。
経営において、撤退の判断が一番難しいと聞いたことがある。それまでに費やしたコスト(=サンクコスト)を惜しむあまり、引くに引けなくなってしまうという。会社やアウトドアではその判断が致命的な命取りになる点が共通している。
探検部現役の頃、中止判断・撤退判断を迫られることが幾たびもあったが、振り返ると強行しなくてよかった、と思うものも多い。こういった類のものは、周りに十分に相談し、議論を尽くすことが大切だと身をもって感じた。最終的に決断するのはリーダーである。しかし、仲間たちはどう感じているのかに耳を傾ける時間も必要だと思う。

 

また、タイトルにある7つの決断とは、会社を興してから下してきたビジネスの決断であり、大きな転機となった決断である。
ここでいう決断とは「将来を見据えて、あえて困難な道を選ぶこと」であると著者はいう。
7つの決断が、いつどのような状況でなされてきたのか、具体的にどのような決断なのかは、是非本書を手にとって読んで頂きたいと考える。

7つの決断には、探検部にも共通することが多く記してあるだろう。自然を相手にした野外だけでなく、部を良くするための組織論としても多くの示唆に富んだ一冊だと思う。

鈴木読書

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