人生に、野遊びを。【鈴木読書】

【スノーピーク 「好きなことだけ!」を仕事にする経営】
山井太著、日経BP社、2014

タイトルにある通り、好きなこと=アウトドア・キャンプを仕事にする会社、スノーピークに関する一冊である。
2017年1月末に三条市にある本社、スノーピーク・ヘッドクォーターズを訪れた際に購入した。

スノーピークの社長である著者自身、キャンプの愛好者である。それも相当の愛好家であり、年間30〜60泊をキャンプで過ごすという。
キャンプへの愛は社員にも共通している。
新卒・中途問わず、採用では「アウトドアが好きかどうか。スノーピークが好きかどうか。アウトドアがライフスタイルである」という観点で面接を進めるという。

 

ここで、スノーピークが定める、ミッション・ステートミント「スノーピークウェイ」を紹介する。
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私達スノーピークは、一人一人の個性が最も重要であると自覚し、
同じ目標を共有する真の信頼で力を合わせ、自然指向のライフスタイルを提案し実現するリーディングカンパニーをつくり上げよう。

私達は、常に変化し、革新を起こし、時代の流れを変えていきます。
私達は、自らもユーザーであるという立場で考え、お互いが感動できるモノやサービスを提供します。私達は、私達に関わる全てのものに、良い影響を与えます。
—————————-
これは、本社オフィスの全社員が見える位置に掲示してある、いわば会社にとってのコンパスである。
常に「真北の方角」を目指し、社員全員で向かう方向を共有する最良の方法だと思う。

ミッションステートメントからも分かるように、キャンプ愛好家・スノーピーク愛好家(通称・スノーピーカー)が集まって出来ている会社がスノーピークなのである。
本書では、経営哲学、スノーピークがこれまで歩んできた道のり、市場へのアプローチ方法、ユーザーとのイベントなど多岐にわたって記されている。
著者自身初の出版である本書は、スノーピーカーにとって必読の一冊といえる。

 

本書では何より胸に響いたのは、自分たちが販売する製品への圧倒的なこだわりである。
著者も、スノーピークの最大の強みは開発力にあると語る。

スノーピークには「製品はすべて永久保証。メーカーならば当然だ」というこだわりがある。以下、本文を引用する。

スノーピークの製品には保証書はついていない。これは製品の保証をしない、という意味ではない。正反対だ。
保証期限を定めることなく、永久に製品の保証をしている。最初からそのつもりなので、わざわざ別に保証書をつける必要がない。
(中略)
メーカーとしてそれだけ自社製品の品質に自信を持っているし、当然のことをしているだけだ。
私がユーザーとしてアウトドア製品を使うとき、「嫌だな」と感じるケースは大きく分けて2つある。1つは製品が壊れること。もう1つは使い勝手が悪いこと。そして、ユーザー目線に立って「そんなものづくりはしない」と決めている。
永久保証の根本にあるのは、ミッション・ステートメントの「自らもユーザーであるという立場」で考える発想だ。

本書では、製品への徹底的なこだわりが語られ、こだわりを実現するために実際に行われている取り組みが紹介されている。
燕三条の地場産業とつながり、質のいい鉄器を提供する。ずば抜けた鋳造技術を持つ会社に依頼する。

もはやスノーピークは一社だけでなく、燕三条地域全体にまたがる会社であると思う。そして、スノーピークを通して燕三条の技術力が日本のみならず、全世界に発信されている。

 

新潟に住んだことで、スノーピークのような会社に出会うことができたことを幸運と言うべきだろう。

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