ユーコン川を筏で下る【鈴木読書】

【ユーコン川を筏で下る】
野田知佑著、小学館、2016

OBの早川さんがユーコンに行った話を聞いたり報告書を読み、雑誌などを読み、本書に行き着いた。

早川さん、現地民にカヌープレゼントしちゃうんだからメチャメチャ格好いいよね。

以下、本書で描かれた旅のあらましである。
幾度もユーコン川を下っている著者も、筏で下るのは初めてだという。きっかけは、1975年のナショナルジオグラフィック(通称ナショジオ)の記事で、20代の青年4人が筏を作って下ったものである。

本書は、ユーコンの自然や人を絶賛し、ユーコンでの珍?道中をゆったりと読み進めることができる。
著者の旅自体にゆったりした時間が流れているからか、文全体に余裕がある気がする。

 

本文中の、ニュージーランドの首相トルドー氏(当時)の言葉が印象的なので引用する。

「汽車に乗って1000マイルいっても、バカはいつまでもバカのままだが、カヌーで100マイルもいけば、その人は自然児になる」

自分の力で、体調や自然と相談しながら時間を過ごすことで、原始の状態に近づけるのではないだろうか。
ニュージーランドというところは、いい国だなぁと思う。

 

ここで、本書からもう一つ印象的な言葉を引用する。

「一国を滅ぼすのに、若い世代に危険を冒すことはばかげていると教えこむことくらい手っ取り早い方法はない」(※イギリスの作家ディック・フランシス『飛越』菊池光訳/ハヤカワ・ミステリ文庫)

なんでもやってみないとわからない。限界を決めるのはいつだって自分、という言葉があるが、自分たちが決めているはずの限界というのは、案外大人たちに教えこまれたものを盲信しているのかもしれない。

昔、アマゾン川を筏で下っていた日本の大学生が2人殺害された事件がある。これに、当時の首相(橋本龍太郎)が若者を責める声明を発表。
これに対し、日本の各大学の探検部関係者たちが反発するという出来事があった。
ここからも、日本は若者の冒険を許容できない社会が続いてきたのかもしれない。
この問題は、近年のアウトドア人口の増加を鑑みると、改善されているという見方もできると僕は思う。勿論、改善されていないという意見もあると思う。

いずれにせよ、根の深い問題である。

 

本文中では、「著者がなぜ川を下るのか」が記されている。

読んでみると、純粋に楽しいから、という好奇心につき動かされていることが分かる。

2017年1月に開いたOB会で、新潟大学探検部創始者の小野寺さんに「あなたにとって探検とはなんですか」という問いかけをした。

小野寺さんは、「知的好奇心の肉体的表現である」と答えてくれた。

何か胸のモヤモヤが晴れるような気分になる答えだった。おそらく、その場にいた多くの部員にとっても、溜飲が下がる答えだっだと思う。

 

 

著者の若い頃の旅は、同著者の『旅へ』が詳しいので、説明はそちらに譲る。
筏は意外と小回りが効いて、ユーコンではよく働いたという。日本の川は渓谷の急流が多く、露出している岩も多いため、日本では少々厳しいかもしれない。

 

長い休みをとって、こんな風にゆったりリバーツーリングをして見たいな〜。

 

最後に、本書の冒頭に記されている、ユーコンの掟を引用する。
—————————————
ユーコンの掟
ロバート・サーヴィス ※筆者訳

これがユーコンの掟である
単純で明快な掟だ
愚かしき者 弱き者を寄越すな
強き者 頭のしっかりした者を送れ
戦いの憤怒に堪えうる者
戦いの準備ができている者を わが許に送れ
鉄の意志を持ち
勝ち誇った豹のごとく敏捷で
負けた熊のごとく
獰猛な男たちを送れ
勇猛な親たちから生まれ きびしい試練で
はがねのように強靭になった男たちを
あなた方の最良の者を わが許に送れ

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