青春の野々村荘【鈴木読書】

【ワセダ青春三畳記】
高野秀行
集英社、2003

3連休は高野秀行氏のシリーズでお届けしようと思います。
その第一弾は、著者の青春時代における「家」に関する一冊。
どんな人間でも、帰る場所というのはあるものです。高野氏が帰る場所は一体どんなところだったのか、それを覗いてみます。

高野氏が青春時代を過ごした「野々村荘」での名エピソード、珍エピソードを綴った一冊。青春といっても、22歳から33歳までの11年間であるから、常人の域を脱している。笑 そのうち8年間は三畳間、残りの3年間が4畳半である。
新潟大学で悪名高き?五十嵐寮ですら6畳間である。その半分と考えると、いかに狭いのか想像に難くない。

野々村荘には、ろくに言葉の通じないフランス人、守銭奴、司法試験浪人の40男、フリーター、そして探検部の面々などが入り乱れて登場する。
大家のおばちゃんと卓球をすることになるエピソードも秀逸である。住民と大家のおばちゃんとの距離がグッと縮まる、心温まりながらも破顔するような一節。
本書を通して感じたのは、高野氏自身が非常にユニークであるが、それと同じくらい周囲の人間が強烈だと感じる。絶対面白いだろ、こんなの。

個人的には、高野氏が11年間愛した野々村荘を離れることになる5章、6章に読者として寂しさを感じる。どういった経緯でそうなるのか、それは是非本書を手にとっていただきたいと思う。(4章まで読んでから読むと、まさか!という衝撃に襲われます。笑)

自分の探検観に影響を与えた高野秀行氏の青春を覗くことのできる一冊。大学を卒業する頃になって読み返してみると、なんとも羨ましく感じる今日この頃である。
願わくば、うら若き大学1.2年生諸君(中高生でも可だが、刺激が強いかも?笑)に触れてもらいたい本書である。

俺もこんな青春送りたかった〜。

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