【ナイル川を下ってみないか】
野田知佑著、株式会社ネイチュアエンタープライズ、2016
日本における、川下りの第一人者である野田知佑氏の、比較的最近上梓された一冊である。この本が世に出された頃、海外の川に興味があり、タイトルに惹かれて購入した。
※上梓: 出版と同義。昔の中国でキササゲという植物が版材に使われていたことが由来。
この本には、衝撃的な言葉がある。
誰かナイル川を下ってみないか。多分、君は死ぬだろうが、それは青年にとって悪い死に方ではない、とぼくは考える。ぼくやモンベルができるだけの応援はするよ。(ここまで引用)
これは、著者の経験や自論に基づく、非常に含蓄のある言葉である。
著者は数々の外国の長距離リバーツーリングをし、以前も紹介したモンベルの創業者であり会長の辰野勇氏も黒部川完漕という冒険カヌーをしたのも、両者ともに40代であったと紹介している。
著者は本書を通して、「若い世代で元気のいいやつが出てこい!」と激励している。
他にも、旅をする大人として、サラリーマン・転覆隊の方々も登場する。転覆隊とは、大手広告代理店の社員が中心になって、過激な川下りをするので有名な集団である。アウトドア雑誌、例えばBE-PALなど、にも度々登場するため、ご存知の方も多いかもしれない。本書では12月の大歩危小歩危をカヤックで下るエピソードが紹介されている。彼らは同じ区間を一度ラフトで下り、何事もなく川下りを終えている。
その後に出た、
「転覆隊が転覆しないとは何事か!」「ゴムボートじゃあ誰も悲惨な目に遭わんじゃないか。もっと転覆を! もっと沈を!」
、、、このセリフは強烈である。そうして、カヤックやパックラフトなどで全国各地の川下りを時に転覆しながら堪能している。
本書には、こんなエピソードも紹介されている。
シティボーイで、アラスカの荒野に一人で入り、自給生活を送り、ついに餓死してしまう青年がいた。『荒野へ』という本になった、実話である。
この青年がアメリカで話題になったそうで、その理由が、
都会の自然に無知な青年がアラスカで自給生活をしようとして失敗したから、、、ではなく、主人公の青春期特有のストイシズム、荒野の中で求道社たらんとする彼の人生模索に多くの読者が共感したからである。
冒険をしたい、荒野の生活に憧れるというのは、若いうちの特権なのかもしれない。
本書から自分が受け取ったメッセージを言語化すると、以下の通りである。
「青年よ、もっと旅をしよう。できれば、一人で。そして、社会がつくりだした「危険」を信じるな。なお、川下りは釣り、焚火、酒、読書を愛すると、より一層楽しい」
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