【幻獣ムベンベを追え】
高野秀行
2003、集英社文庫
(親本はPHP出版社より1989年に上梓)
3連休最終日は、高野秀行ファンなら必読の一冊、あの「ムベンベ」です。高野氏にとって初出版の本であり、アフリカのコンゴまでネッシーに並び評されるというUMA、ムベンベを探しにいくというストーリー。
僕が2年生のときに出会い、「せっかくの大学生活なにかしたい」と変化のきっかけをもらったというお気に入りの本でもあります。
本書では、コンゴ現地での苦労は勿論、計画を立てて現地に行くまでのプロセスがとにかく面白い。
時は1986年。当時はインターネットも充分でなく、必要なものがあれば、自らの足でとにかく動き回る姿が見て取れる。
コンゴは旧フランス領であるため、公用語はフランス語という情報を入手した著者。
電車で隣に座った若いフランス人女性にその場で声をかけて、フランス語を教えてくれるように頼みこんだという。まず、この決断力というか、行動力が凄まじい。
さらに、ムベンベが存在する(と信じられている)テレ湖周辺の共通語であるリンガラ語を学ぶために奔走する。コンゴ・ドラゴン(ムベンベの通称)の前に、コンゴ人を日本で探す、というエピソードもおりこまれている。
言語から入る高野氏の手法は、その後の著作を見てもわかるように、現地人とのナマのやりとりにつながる。そのことが、他の旅行記などにない鮮度を本に与えているのではないだろうか。
コンゴドラゴンプロジェクト(CDP)のメンバーは計12名である。早稲田大学探検部員9名、未知動物研究家の高林篤春、駒澤大学探検部の野々山富雄、そしてカメラマンの鈴木邦弘である。
この異色のメンバーは、実はそれぞれ目的も微妙に異なる。
怪獣実在の証拠を掴む、ムベンベを写真か映像におさめたい、に加え、ジャングル探査、小動物の採集、テレ湖そのものに地理学的な興味がある、などなどさまざまである。
十二人十二色なメンバーが織りなす現地でのストーリーは、悪戦苦闘の連続であり、グイグイ惹かれていく。
また、本書の一番最後に掲載してある、宮部みゆきによる本書の解説も読み応えがある。
探検部出身者を「心に半ズボンはいているおじさま」と表現するあたりに、納得してしまう。
大学を卒業して、背広を着たりお腹が出たりして、姿格好は変わってしまうかもしれないけれど、いつまでも「心に半ズボン」をはいていたいものです。周りから見たら寒そうかもしれないけど、少年の心で動き回ってるから、本人たちの心はあったかいままなんだよね。きっと。
探検小僧たちは、はたしてムベンベを見つけられたのか。その結末は、ぜひ本書をご覧ください。
いつまでも心に半ズボンをはいたままでいたいですね〜。
※一部敬称略
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