記録者:A澤
日時:9月8-10日
場所:北アルプス 槍ヶ岳北鎌尾根
メンバー:CL・記録・装備 A澤(4年)
SL・食担・車 ウェイ(2年)
共装:50mロープ2本、60スリング1本、120スリング2本、240スリング1本、カラビナ8枚、ハーケン3、捨て縄10m、1-2人用テント、ペグ、共同食2人分×4食(アルファ米600g、レトルトパウチ3食、棒ラーメン1食、スープ2食)、ガス缶2、ジェットボイル、ガスヘッド、ファーストエイド(ロキソニン、ポイズンリムーバー含む)、携帯ラジオ、天気図記入用紙、筆記用具
個装:ザック、登山靴、靴下、下着上下(予備含む)、登山用の服(化繊orウール)、防寒着、雨具、ヘッデン(予備電池含む)、ヘルメット、ハーネス、ビレイグローブ、確保器・下降器、安環付ビナ4枚、60スリング、120スリング、カラビナ2、ハンマー、ナイフ、プルージックコード、コンパス、地形図、ホイッスル、防水袋、水、行動食、非常食、携帯電話、シュラフ、シュラフカバー、ライター、食器・箸、ロール、銀マ、カメラ、お金、風呂セット、日焼け止め
はじめに
槍ヶ岳北鎌尾根といえば日本のクラシック・ルートのなかで最も有名と言える尾根ルートであり、冬季登山において加藤文太郎や松濤 明が遭難し、その遺稿『単独行』、『風雪のビバーク』の舞台となるなど数々の悲劇やドラマが繰り広げられてきたルートである。登山が、北アルプスが好きな者なら一度は耳にし憧れるルートである。私の北鎌との出会いは2年生の時。穂高さんが高久さんと三人で行こうと誘ってくれたが、自分の実力不足を感じ断ってしまった。3年の夏に槍ヶ岳を表銀座縦走で登った時に東鎌尾根から見える北鎌の尖った稜線や山頂から見下ろせる急峻な岩場に心惹かれ、2年生の時に行かなかったことを悔やむと同時に、次はこっちから登ってやると心の内で密かに思っていたのだった。
北鎌尾根へのアプローチは大きく3つに分かれる。
- 高瀬ダム―水俣川-天上沢―北鎌沢右俣-北鎌のコル(赤線→橙線)
- 中房温泉―燕岳―大天井岳―貧乏沢-北鎌沢右俣―北鎌のコル(緑線)
- 上高地―槍沢―水俣乗越―北鎌沢右俣―北鎌のコル(黄線)
1は以前最も使われていたルートだが湯俣~北鎌沢出合までの道が崩壊し沢を歩かなくてはならなくなったためあまり人が入らなくなった。私たちは北鎌沢までは行かずに天上沢の途中で尾根に取り付きP2から登った。(赤線)冬はこのように末端から登るのが主流であるらしい。末端からだと尾根歩きが長く、一度尾根に上がってしまうと水が汲めないため全ての飲み水を持って上がらなくてはならない。つらい。2は最近ではよく使われるルートであるが、登りがきついのと歩く距離が長い。表銀座縦走コースの一部なので小屋泊まりが可能で水の心配もない。3は槍沢の登りが長く、一度水俣乗越まで上がらなくてはならない。また水俣乗越から北鎌沢へ下る道が荒廃していて最近あまり使われなくなった。
6月、就活明けで体力に不安を抱えながら、どのルートで登ろうか迷っているとOBの塚原さんから連絡が来た。「北鎌登るんなら末端からでしょ。」その言葉に押されて1のルート(北鎌沢まで行かない)で登ることを決心した。体力とか技術とか、自分たちが行けるところに行くんじゃなくて行きたい所に行くためにつけるものだったと改めて気づかされた。沢登りに行かなければ。
ルート1を取ることで下山についても悩まされた
下山ルート1、貧乏沢―天上沢―水俣沢―高瀬川―七倉(アプローチルートを戻る感じ):入山口に戻って来れるのでほとんどお金がかからないが、貧乏沢―天上沢の途中まで道がどのようになっているか分からず危険。場合によっては一番時間がかかる。
下山ルート2、東鎌尾根―大天井岳―燕岳―中房温泉(緑線に近い):上高地よりは七倉に近く、タクシー代も15000円程度。だが稜線歩きが長く11~12時間かかる。
下山ルート3、槍沢―上高地(黄線に近い):6時間ほど緩い下りを下るだけなので一番早く、楽に下山できるが上高地から七倉まで距離が遠く、タクシー代が25000円かかる。
二人で話し合って下山は当日沢の様子や自分たちの体力を見て決めようということになった。上高地に降りるならヒッチハイクで松本、大町方面に向かうということも考えていた。
前置きが長くなってしまったが、このようにルートを決めるだけでも困難があって面白く、わくわくさせる山行であった。
行程
9/7(水) 天気:晴れ
1530部室集合 部室に着くとすでにウェイが装備を準備していた。計画書を見て忘れ物が無いかチェック。したのだったが・・・。
1545出発 小川山マルチの計画書を出しに学務に寄る。
1600原信で買い出し
1635発
2000糸魚川 用事があったためA澤の実家に寄ってもらう。ついでにご飯をごちそうになる。台風が近づいていることと近頃山で熊がよく出るというニュースから両親はかなり心配している。ウェイ「熊からは僕が守るんで!(キリッ)」じゃあそういうことで。笑
2115発
0010七倉山荘着 トイレ有(きれい)、山荘に温泉あり。
0035車中で仮眠
9/8(木) 天気:雨
0500起床 あんま寝れなかった。パッキングを終えて荷物の重さを計ると、A澤→16kg、ウェイ→18kgだった。水2Lくらいしか詰めてないのでまだ全然重くない。
0630タクシー営業開始 乗車。高瀬ダムに向かう。小雨が降ってきた。
0648高瀬ダム着 タクシーの運転手さんから鈴を持ってきたかと聞かれる。持ってきていないと話すと、「このへん熊出るから気を付けてねー。人間なんてあっというまにやられちゃうからねー。あははー。」と怖いことを屈託のない笑顔で言ってくる。エスケープで戻ってくるときは高瀬ダムにある公衆電話(10円玉しか使えない)でタクシーを呼べば迎えに来てくれるようだ。運転手さんに100円を両替してもらおうと思ったら、普通に10円一枚くれた。人から10円をもらうのなんていつぶりだろう。いい人だった。
0655出発 高瀬ダムに来ていた登山者はちらほらいたが、高瀬川方面に行くのは私たちだけのようだ。熊に怯えながらトンネルや林道を歩く。
0744林道終点 ここから道幅は狭くなり登山道にかわる。
0805名無避難小屋着 休憩。小屋の中は広く囲炉裏みたいのもあって泊まるに快適そうだ。
0815発
0900湯俣・水俣出合 堰堤の管理小屋の前で休憩。雨が本降りになってくる。沢増水してるのかなー。
0910発 水俣川に入ると、すぐに吊り橋が現れる。脆そうなので一人ずつ渡る。ここから沢を遡行することになるのだが、この沢は右岸左岸の一方を歩き続けるのは困難で、何度も渡渉をしなければならなかった。増水しているのか、水位は低くても脛あたりまであり、中には腿の付け根くらいまで浸かるところもあった。流れの早いところは足を持って行かれそうになるが、すり足で歩き、大きな岩の下流側を歩くと流されにくい。水は冷たく足の感覚が徐々に奪われていく。
1020左岸フィックスロープのある場所
右岸は歩けそうもない。フィックスロープに頼りながら左岸の岩を10m程へつっていくが、A澤足を滑らし沢に落ち、左半身が水に浸かり悶える。寒っ!岩に戻って続行を図るもまた滑る。結局3回も水に落ちてしまった。ウェイの山靴はソールがぬるぬるの岩と相性良いようで滑っていなかった。
1051千天出合着 千上沢も天上沢も水量は同じくらい。出合は正面に北鎌尾根の最末端部が現れるので分かりやすかった。ここから天上沢に入る。天上沢はいくつか3m程の滝があったり巨石があったりとより沢登りチックになっていく。二か所高巻きもした。
1145 P2支尾根、取り付き着 ウェイは取り付きをすぐ見つけられたが、A澤はよく分からなかった。読図が弱いのはCLとして上級生として恥ずかしいことである。悔しい。ちなみに取り付きは赤テープあり、銅板のレリーフありで目印を見つけてしまえば分かりやすい。沢を早く抜けたかったため3時間近く休憩を取っていなかったので、ひとまず休憩。ここで残り二日分の水を詰めていく。一人6Lずつ持って上がるので荷物は単純計算でA澤:16kg→20kg、ウェイ:18kg→22kgになった。ウェイは文登研で30kg以上担いだので余裕そうだ。
1200発 踏み跡は明瞭で赤テープがこれでもかと貼ってあるので迷うことは無い。バリエーションルートにこんなに目印があっていいものなのだろうかと考えるが、おかげでルーファイは楽だ。尾根を登っている間も相変わらず雨は降り続き更には雷も鳴り出した。森林限界のP4でのビバークが絶望的に思えた。思わず「勘弁してくれよー!!」と叫んだ。
1315 P2と思しき場所に着く テント2~3張りは張れそうな細長い平らなピークである。ここでのビバークも考えたが、まだ高木が生えている高度であるためもう少し進むことに。体が渡渉と雨で濡れているので体温がじわじわ奪われていく。歩いていても体が温まらない。まずい。
1400 P3手前の小さなテントが1張りできるくらいのちょっと平らな土地に着く。雨は強く降っている。この先にビバークできるポイントはP4まで無い。またP4は高い木が生えていないひらけたピークであるので雨風雷にさらされることになる。加えて二人とも寒さにまいっていたので今日はここでビバークすることに。テントを立てる時、あることに気づいた。ロックハンマー持ってきてない・・・。ハーケンは持ってきたのになぜハンマーを忘れるか。無いものはしょうがないのでその辺の岩でペグを打った。テント内に入るとまた一つ、気づいた。自分の銀マ持ってきてない!!!なぜなのか。原因は計画書にあった。ハンマー、銀マを計画書の個人装備の欄に入れてしまったため、部室で共装を準備している時に見落としてしまったのだった。それにしてももっとしっかりチェックするべきだった。幸いウェイは個装で銀マを持ってきていたので、ウェイの銀マを半分借りてあとはロープを敷いて寝ることにした。
1430自炊 今回の食事はアルファ米とレトルト食品。炊事は必要なくお湯さえ沸かせばよいのでジェットボイルと予備で小さなガスヘッドを一つ持ってきた。水を入れてジェットボイルに火を点ける。なんかいつもよりガス臭いし炎の立ち方が妙だ。コッヘル部分を取りつけてみると、なんと炎がコッヘルの脇から漏れている!どういうこと!ガス缶を付け直したり火を点け直してみても変わらない。やべえよやべえよ・・・。しょうがないので予備のガスヘッドを使って個人用コッヘルでちょこちょこお湯を沸かすことにした。はー、予備持ってきてて良かったー。結局ジェットボイルは帰ってから部室で使ってみたら普通に直ってた。原因は調査中だが、ガス缶との相性、ヘッド部分が湿気ていたことが考えられる。
1450食事 今夜はアルファ米、中華丼レトルト、クノールのたらこクリームスープパスタとトマトスープパスタ。とろとろのスープは体が温まって嬉しかった。食べながら今日の反省点を話す。忘れ物やうっかりミスが多く、互い気が緩んでいる。一緒に活動することに慣れて信用するのは良いが、やはり先輩であっても後輩であっても信頼はしてはいけない。このままでは活動中に何か重大なミスを犯すと思ったので、活動中はテント内であっても気を抜かず確実にこなそうと約束した。
1600天気図記入 今日はやはり台風の影響が残っての悪天だったようだ。明日は晴れそうだ。テントの外はいつの間にか晴れている。もうこれから降らなそうなので木に濡れた衣服を吊るして干すことにした。他に人がいないテン場というのは気を遣わなくてよいので楽しい。ずっとこういうのやりたかったんだ。
1834就寝
9/9(金) 天気:晴れ
0300起床・食事 ウェイの部ポロシャツが乾かないので湯を沸かすときに蓋にしていた熱々のコッヘルをポロシャツにあてて乾かす。A澤がコッヘルを渡すとき、不注意でウェイの足の甲にやけどを負わせてしまった。申し訳ない。もうこういうミスは絶対に犯さない!
0520ルーファイが心配だったので空が明るんでから出発。
藪が続き、昨日の雨で草木が濡れているので上下カッパを着込む。途中、急斜面に出くわし草を掴んでは体を上げ掴んでは上げという作業に少し疲れる。ここは雨が降ってたら滑ること間違いなしで、やはり昨日進まなくて良かったなと感じた。
0615 P3と思しきピーク。雨風にさらされるがここにもテントが1張できそうな土地があった。
0700 P4ピーク着 テント2張りくらいできそう。しかし全方位切れ落ちた崖がすぐ迫っているので怖かった。ようやく昨日予定していたビバーク地についた。今のところ1時間半から2時間ほど行程に遅れが出ている。
0810 P5、P6間のコル着 P5は天上沢側に踏み跡がうっすらありそちら側に巻いた。まずは岩場を斜め下にトラバース。ここは岩が脆くホールド・スタンスがシビアで難しい。一か所ハーケンが打ってあって少し黒ずんだお助け縄が垂れていたが、傾斜が厳しくここはお助け縄に頼らざるを得なかった。お助け縄をバシバシ引っ張って切れないことを確認したのち、体重を預ける。怖えー。トラバースを終えた後もザレた地面の草付と格闘。ずさーっと少し滑った。死ぬかとおもった。P5の巻きは中々にえぐかった。
P6巻き。千上沢側に岩場を巻いた気がする。 とにかくピークには行っていない。
0917 P7頂上(?) 眺望が良く、槍の向こう側の南岳が見える。この辺からピークを勘違いする。写真にあるどっしりとした高いピークは独標(P10)なのだが、P8だと勘違いしながら進む。実はここから槍の頂上も独標の右にちらっと見える。
1045 独標前の小ピーク(ここがP8もしくはP9だったのかも)を千上沢側に巻こうとウェイが先に進むが、脆い岩の斜面の4~5mのトラバースで手こずる。ホールド・スタンスは体重をかけたとたん崩れ落ち、彼はホールドを岩が剥がれない方向に押しつけながら無理やり通過していた。ごり押しだごり押し。よくそこ行けたな君は・・・。私には到底越せそうにない。ウェイは草付の割と安全な斜面に着いたため、別れて私はピークを直登した。登ってみればすぐに頭に出てしまって、こちらの方が安全で楽だったようだ。ウェイは千上沢側の支尾根の方から出てきた。この巻きはミスだった。危ないことをさせてしまった。
少し進むと、独標の千上沢側を巻くトラバースに出くわす。私たちはこのピークを独標だと思っていなかったので、核心の一つと言われているこのトラバースも気負わず進めばなんということは無く、その後の凹角もスラブもノーロープでこなした。凹角は3~4m程の短い登りだがお助け縄かかってなかったらちょっとロープ出したくなるかも。凹角を登り終えると前に中年男女の2人連れが登っていた。尾根に上がってから初めて人に会った。中年男女は凹角、スラブともにロープを付けて登っていた。スラブの上は少しザレていて浮石があったので、彼らが落石を落としてこないか心配だった。落石を避けて踏み跡を辿らず岩峰のカンテを登る。ちなみに独標直下のスラブを登らずに千上沢側に巻くと独標ピークに辿りつけない。
1150出発 独標からこの先は小岩峰のアップダウンが連続するやせた尾根が続く。ここからはピークを巻かずに直登して、なるべく稜線通しで登るのが吉。下手に巻くとザレた脆い斜面に捕まる。クライマーであるからか、二人とも岩場ではペースが上がり槍の穂先がぐんぐん近づいてくる。
1140独標(P10)ピークちょい手前に到着 独標を独標だと思っていないので、ピークに行かずに進もうとしていると、先ほどの男女2人に「君たち独標ピーク行かないの?」と聞かれて仰天した。えっここもう独標なんかい。半信半疑の私たちは景色と地形図を見比べる。雲がかかっていた前方もだんだんガスが消えてきて、槍の穂先が顔をのぞかせる。あっここ独標ですね・・・。核心をさらっと終えてしまって悲しい。もっと堪能すれば良かった。
1237 P12、P13の間で休憩。
1247 出発 P13は白くザレた岩峰がそびえ少し傾斜があるため巻きたくなるが事前情報では千上沢側(写真では右側にうっすら見える)に巻き道があるが途中で切れているので直登が正解らしい。遠巻きには難しそうに見えたが、取り付きから見上げると案外登れそうだ。躊躇なくフリーで登る。一段目は正面のクラック(写真では下の人がいるところの真上)を登るが、上部のリップが浮石だらけで手がかりが少ない。二段目は一段目より緩い斜面なので落ち着いて歩けば問題ない。
P14、P15も巻かずに直登。P15は巻くと北鎌平に出られないらしい。
1418北鎌平着 行程遅れているかと思ってたら計画より1時間近く早く着いた。良かった~。槍の頂上に行く時間は十分あるが下山まではできない。山小屋のテン場を使うとお金取られるので今日は予定通りここでビバークすることに。テントを立てたり濡れた衣服を干していると、先の中年男女がやってきて少し話した。彼らは前日に北鎌沢出合に泊まっていたらしく、雨による増水があって大変だったそう。貧乏沢~北鎌沢のコルまでが割と核心だったらしい。笑 山頂へ行く彼らを見送り、少しすると上からまた呼ぶ声が。どうやら水が余るので必要ならあげるとのこと。こちらも必要な分を計算して持ってきているので水は十分ある。お礼を言って断ると山頂直下の岩場に消えていった。独標を教えてもらったりとあの人たちにお世話になった。
1500食事 今日は晴れていて風も無いので外で炊事をして食べた。
1600天気図記入。昨日は私が書いたので今日はウェイに書かせた。その間A澤は干していた服をひっくり返したり景色を眺めたりして遊んでいた。今日は私たちと中年男女の他に北鎌に取り付いているパーティーは無く、北鎌平で泊まるのは私たちだけのようだ。快適で静か、最高のテン場だ。
1700寝る準備をしながら明日の下山のことを話す。下山ルート1の沢を下って戻るのはやはり天上沢上流がどうなっているか不明なためやめたほうが良いという話になった。二人とも口には出さなかったが何よりもう渡渉で濡れたくなかった。表銀座縦走して帰るのもありかなと思いつつ、ヒッチハイクに賭けて上高地に下山することを決める。明日の核心は山頂直下の登りとヒッチハイクだ。
1830就寝 今日はロープを二本敷き詰めて寝たのだが、底冷えして寒かった。22時くらいから目を覚ましそこから寝たり起きたりを繰り返す。さみー。
9/10(土)
0300起床・食事 山岳部御用達のマルタイ棒ラーメンに餅や乾物を入れて食べた。明るくなってから動き出すことにしたため時間に余裕があり、テントの入り口から星を見たりしてダラダラ過ごす。
0513出発 山頂に向かってガレ場を登っていく。山頂へ天上沢側に少し巻きつつ登ると、チムニーが現れる。これが核心?残置ハーケンやスリングがあるが、使わずに登る。上に出て少し登るとまたチムニーが現れた。こっちが核心のチムニーらしい。6~7m程チムニーの中を登り、右のフェースに出るのが良さそうだ。登りは易しそうだが浮石が多いのでロープを出すパーティーがいるのも頷ける。最初はチムニーらしく足を両側に張ってよじ登るが、下を見ると高度感があって怖い。フェースに出るところでスタンスになりそうなものがチョックストーンや浮石ばかりでホールドは脆く、掴んだ岩が欠けないよう祈りながら登った。ここは雨が降っていたり岩が湿っているならロープを出した方が良さそうだ。
チムニーを終えると、もうすぐ山頂なはずなのだが、もう一段壁が立ちはだかる。右に行くと垂直に近い壁が伸び、一応残置ハーケンはある。ロープ使わないと無理そう。左は少しかぶっているが左上部がスラブになっていて登れそうだ。左を登る。山頂直下の岩場は大小様々な岩が積み重なっているだけなので浮石が多い。ここもそうなのだが、スラブからリップに上がる際にも手がかりを探すのに苦労し、なるべく大きくて丈夫そうな岩を掴んで体を上げた。ここを超えると天上沢側に階段のような道があり、岩陰から出ると急に山頂にいる人たちが見えた。山頂にいるのは7~8人といったところか。人を見た私の第一声は「おはようございまーす」だった。私が先に岩陰から出て歩いていて山頂の人からウェイの姿は見えなかったため、若い女が一人で登ってくる様は奇妙だったと思う。
0607山頂着 噂に聞く他の登山者から拍手で迎えられるというようなことはなかったが、この日北鎌を登ってきたパーティーは私たちだけであったので、少しざわつき、「すごいね」「お疲れ様」と声を掛けられた。今日もいい天気で山頂から360度見渡せた。東鎌尾根から前穂の北尾根までよく見える。登ってきた北鎌も遠くの末端まで見渡すとその距離にしみじみした。結局ザイルパートナーとザイルを結び合うことは一度も無かったが楽しい登りであった。山頂の祠の前で記念撮影。「肩組もう!」とウェイに言い、彼の肩に手を伸ばすが身長差があり過ぎて届かない。かがむと変な感じになるのでそのまま撮影してもらう。ここには写真を載せないが完全にこれ肩を抱いてる感じになってる。後で写真を見て笑った。
0620山頂発 土曜日だからか、大勢の人が登り降りしてくる。鎖場の順番待ちなどしていて意外と時間を食った。
0700山荘着 休憩
0800水俣出合
0915槍沢ロッジ ここから平たんで退屈な下山が始まる。人物当てクイズとかなぞなぞしながら歩いた。
1035横尾 やっぱり歩いてる間暇すぎるので条件付きしりとりをしだす。料理・食べ物の名前だけのしりとりは空腹には応えた。あと、ウェイの「炒りごま」とか「黒ごま」とか、胡麻シリーズずるくないですかね。
1124徳沢
1305上高地着 今回は二人なのでバスで沢渡まで行くことに。バスだと松本までの便があるのだが、登山者の多い沢渡の方がヒッチハイクが成功しやすいと考え、そうした。
1325バス乗車 観光客にとってはバス乗車自体も観光の一部であるからか、バスの運転手さんが道中の見どころを解説してくれる。これがけっこう面白い。
1400沢渡バスターミナル着 声をかけ始めて2組目、早くも30代くらいのカップルの登山者の車に乗せてもらえることになった。(下山後で疲れていて断り切れず嫌々という感じだったけど笑)カップルは埼玉から来たそうで、松本ICから高速に乗るそうなのでIC近くの大庭駅で降ろしてもらうことに。後部座席で座っていると、ウェイは乗せてもらっておいて隣で寝だす。何度か小突いて起こすがまたすぐ寝るので諦めた。元気そうに見えて意外と疲れが溜まっていたのかも。
1513大庭駅着 お礼を言って別れる。そういえば名前も聞いていなかった。ここで書いてもしょうがないけど、あの時のお兄さんお姉さんありがとう。沢渡近くの白骨温泉とか行く予定だったらごめんなさい笑
1547松本行の電車に乗る
1554松本駅着 JR大糸線に乗り替える。
1658信濃大町駅着 さっき電話して予約したタクシーの運転手さんが駅の改札で待っていてくれた。タクシー乗車。
1735七倉山荘着 やっと帰ってきた。ミッションコンプリート!思わずハイタッチ。
1830みみずくの湯(白馬村)着 七倉山荘にも温泉はあるが650円とちょっと高かったのでとりあえずパス。みみずくの湯も600円でそんな変わらなかったけどね。
1935ちとせ食堂 2年前に白馬登った時に来たことある。ヒレカツうまい。
2020発 今回は二人なので車では絶対に寝られない!私は眠くなった時用にいくつか目覚ましを用意していた。一つは塚原さんに報告の連絡を入れること、一つはPerfumeの曲を流すこと、一つは同期や後輩に電話することである。二つ目までカードを使ったが、結局巻あたりから大学前まで寝てしまった。ごめんなさい。
0100部室着・解散
全体を通しての反省点
【二人とも】
・ハンマー・銀マ(A澤だけ)という重要なものを忘れた
・ピークを勘違いしていた
【A澤】
・ウェイに火傷を負わせた
・尾根の取り付きを赤テープやレリーフといった目印に頼り過ぎで読図を怠っていた
【ウェイ】
・ルーファイミス。危険な道を無理に進んだ→A澤が判断して止めなかったせいもあるが
行程の記録にも書いたが、忘れ物は計画書の作成の仕方と確認を怠ったことが原因であるが、両者が信頼しきって相手任せにしていたことがそういったミスを招いている。また、ピークの間違いは恐らくP5,P6を巻いている間に気づかずにP7を一緒に巻いてしまっているか、P8、P9はピークとして地味すぎて頂上を踏んでいても気づかなかった可能性がある。北鎌尾根はピークが15峰あるが実際に歩いてみて、下から見上げながら登ると次のピークだと思っていた場所がまだ登りの途中だったり、その逆もあった。特にP11~P14はパっとせず、P15の頂上から見下ろすとやっと数えられる程度の出っ張りでしかなく、現在地把握が難しかった。ガスっていると難しいが尾根の形や沢の位置、植生などから現在地を把握する経験を積む必要があると感じた。
個人的な反省では山登りの基礎である生活技術の重要性に改めて気づかされた。疲れた体でテントに入って食事の準備をする、そういったことを確実にこなしていくのが長期の活動の成功を握る。今回は自分の不注意でウェイの足の甲に十円玉大の火傷を負わせてしまったが、熱湯を溢したりして足全体に火傷をしてしまえば、もう次の日からの行動は不可である。たとえテント内であっても疲れていても適当にやらない、面倒くさがらないというのが大切だ。
感想
何より今年の目標であったルートを完登することができたことが嬉しく、大きな達成感を得られた。当初は一年生を連れて行く計画もあったが、自分たちで精一杯で面倒を見きれないだろう。というか、上級生でも連れて行ける人は限られているとすら思う。一緒に行ってくれたウェイは体力・技術面でも同等かそれ以上のレベルに達していて、連れて行くという感じではなく対等な関係で助け合って行動でき、とても成長を感じた。自分も体力面ではどうしても劣る部分があるかもしれないが知識・技術面をもっと磨いていく必要があると考えさせられた。アルパインをやっていると、山において最低限自分のことは自分でできるという人を連れて行きたいと思うことが多々あり、これからの探検部の登山部門の発展とアルパインクライミングの存続にとってはそういう人を育成しなければならない。
長々と書いてきましたが最後に・・・
北鎌を末端から登るルートは沢の遡行が欠かせないため、一度も沢登りに行ったことがなかった私は7月・8月に沢活動に行っていなければこのルートを選ぶことも無かっただろう。衰退していた沢活動を今年から復活させて沢に連れて行ってくれたF村、H田、N潟、ウェイに本当に感謝している。他の活動の経験を自分がやりたい活動でも生かすことができ、多様性のあるこの部活で続けてきて良かったと思える山行であった。
シュラフを貸してくれたたなじゅんにも感謝!(荷物を小さくするために自分のでかいシュラフを持って行かずにたなじゅんから借りた笑)
ヒッチハイクも含めいろんな人のおかげで達成できた活動だった。
不確定要素が多く計画段階からワクワクしたし、辛い時もあったけどめちゃめちゃ楽しかった。山、最高。
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